「無職」の不思議2008年11月21日 00時45分

何でも無免許で医者をしていた男が逮捕されたらしい。それも一箇月やそこらの偽医者ではなく28年間もやってきたらしい。一番不思議なのは、いくら見よう見まねとはいえ、そう簡単に医者ができるのかということだ。他人の名前を騙るにしても医師免許の提示は要求されなかったのだろうか。
他人の名前を騙っているということはいろいろな場面で不都合が生じることもあるだろう。私の疑問は何がきっかけで無免許が発覚したのかということだ。半年やそこらの偽医者であれば「さもありなん」という気がするが、男は28年もの間医師で通してきたのだ。もしかすると本人ですら偽医師としての自覚が薄れていたかもしれないくらいの年月である。

それはともかく、もう一つの疑問は男の職業を「無職」とするメディアである。男も無免許であるのだからばれてしまっては観念するしかないと思うが、新聞や TV で自分のニュースを見れば男は納得できない気持ちになるだろう。

「確かに今は逮捕されて無職だし、免許も持っていない。しかしこの28年間、私は無職ではなかった筈だ」

これは一体どう考えればいいのだろう。しがないフリーターよりよほど定職であったと思うし、アンケートでもローンの申込みでもいいが、職業欄に「医師」と書けばつい数日前までは誰もが納得していた筈だ。そんな男が逆に「無職」と書けば誰もがその男を疑うだろう。それも偽医者としてではなく無職と主張する男の神経をだ。

医師免許なく医師という職業に就くことが法律で禁止されていることは、法律を読むまでもなく上記のことからも歴然としている。しかし、「無免許の医療行為はこれを無職と看做す」という条文があるとは思えない。

倫理的あるいは法的に問題があったとしても、それで生計を立てており、他に収入がなければそれは違法であったとしても職業とは言わないのだろうか。

別にこの男を擁護する気はない。ただ、それまで28年間「医師」として、たとえそれが無免許であったとしても勤めてきてそれ以外の収入もなく(記事には無免許以外のことに触れられていないし、男も「金が必要だった」と言っているらしいからそういう前提で書いている)、趣味の医者でもなかった男の職業は医師あるいは医者ではなかったのか。

ならば「無免許医師」と書けばいいのかというと、おそらく「医師」と呼ばれるのは免許がある者でなければならないのだろう。それは何となくわかるし、免許のない男を今さらながらであっても「元医師」と称するのがおかしいというのもわからないでもない。免許を持ちながらぶらぶらしていても「医師」なのかと言えばその人こそが本物の「無職」であり、単なる「医師免許保持者」だ。
医師免許がないとしても医者として勤めていた事実は「偽医師」あるいは逮捕されたということで「元偽医師」くらいが妥当な線ではないのだろうか。

コメント

_ ら ― 2008年11月27日 22時55分

これはもしかするとメディアの言語感覚が一層貧困になってきていることを物語っているのかもしれない。
ニュースなり新聞の記事は紋切り型の文章で組み立てられていて、大事件や特殊な事件も凡庸に見える。住宅街はいつも「閑静」だし、問題は大抵「浮き彫り」になってその姿を現す。

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