Google 翻訳2017年02月04日 10時45分

去年、Google 翻訳にニューラルネットワークを導入したという話は聞いていた。話を聞いたときに少し試してみると確かに自然な仕上がりになっていた。しかしあまり使うことはないだろうと思っていた。

ところが、先週翻訳の仕事がきたので下訳に使ってみることにした。分量が多いのと、私の分野外の内容だったからだ。

使ってみた感想は「実に悩ましい」ということだ。どういうことか。
訳された文章は巷で言われているようにこなれた日本語である。Google 翻訳を使った後に別の翻訳サイトで翻訳してみると何が書かれているのかさっぱりわからない。他所のサービスが使えないくらいの日本語に仕上がっているという意味ではすばらしい。訳も割合よくできているように見える。

悩ましいのはここからである。ところどころ訳を抜かすことと嘘の訳をすることである。嘘の訳は前からで、not があるのに not を訳さないというのはよくあったから「まあこんなものか」と思っていたが、AI はフレーズをごそっと無視して訳すことがある。

仕事の翻訳ということもあるので、結果をそのまま使うわけにはいかないからすべてチェックしているが、翻訳結果のチェックができない人には相変らず使えない。簡単な文なら大丈夫かどうかまでは評価していないが、いずれにしても自己責任ということだ。

そうはいってもかなり複雑な文章でも頑張っているし、Google 翻訳に助けられた翻訳もある。いいのか悪いのか、何より他の翻訳サービスを使えないようにしてしまった。「異次元」という形容は強ち大袈裟でもない。

現在はそんな具合であるが、いい加減な翻訳をしている翻訳者は数年もすれば駆逐されるかもしれない。翻訳者は英語だけでなく翻訳している分野に関して猛勉強しないと Google に仕事を奪われてしまうだろうし、原語に引きずられた訳をしているようでは仕事を回してもらえなくなるだろう。定年後は翻訳のアルバイトでもするかと思っていたが、そんな仕事はその頃にはないかもしれない。

前から言っているが、英語だけしか勉強していない翻訳者は基本的に使えない。訳すものの内容がわかっていないときちんとした訳ができないからだ。結局英語に詳しくても日常会話ならともかく、専門分野の文章はそれでは意味の通る訳文に仕上げることができないことがある。普通の単語がその業界で独特の意味として使われていることがあるからだ。
そんなわけで何でも翻訳できる翻訳者になるには普通の人以上にいろんなことを勉強しなければならない。極端なことを言えば何に対してもスペシャリストとしての知識が要求される。そこまでいかなくても、ある分野の翻訳をしようとすると、その分野に関して専門家程度の知識が要求されるということがわかっている翻訳者はどれくらいいるだろうか。
私が一緒に仕事をしてきた翻訳者は大抵、腰掛け気分ではないかと疑われるような仕事をしていた。その職場に来たからには、そこの仕事の内容について理解しないと、使えない翻訳者のままだろう。

いずれにしても私も他人ごとではないのだった。

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