小鼓の構えに関する問題2014年02月02日 22時00分

鼓を習い始めて気になることが多い。

TV を見ていると番組、CM を含めて無闇にサンプリングの鼓が聞こえてくる。習うまではまったく気になったことはないが、最近矢鱈に気になって仕方がない。
サンプリングされているくらいだから確かに素人の下手な粒(一音)より見事に鳴っているのは間違いない。ところが全然いい音に感じられないのだ。他の楽器のサンプリング音の場合は、サンプリングとわかっても「あー、サンプリングやな」くらいの印象しかないが、なぜか鼓は印象が違う。実際に奏者がサンプリングのときに打った音は死んでいないのだろうと思うが、完成した音は間違いなく死んでいる。あれは一体なぜだろう。サンプリング音も機材なりソースの高い・安いがあるようで、チープな音のこともあって、印象はさらに酷くなる。
いずれにしても気になって仕方がないので鼓のサンプリング音を無闇に使わないでもらいたいと思っている。

本題から逸れた。問題は構えなのだった。
若干逸れるが、ある TV ゲームの CM で鼓を打っている人物が登場するのがある。ゲームに興味がないので何のタイトルかは知らないが、神社みたいなところで祭のように大勢の人が騒いでいる映像のやつだ。この恰好だけの鼓打ちは実際に音は鳴らしていない。これは断言する。というのもあんな打ち方で音が鳴る筈がないからだし、組まれた楽器も鳴るようには見えない。

本題はこれからだ。
あなたは小鼓の構えを知っているだろうか。実際に構えをしてみてもいいし、恰好を想像してもいい。

おそらくそれはこうだ。
左手を左肩のところに持って行き、右手を左肩に持って行って打つ恰好をしていないだろうか。左利きの人は逆の可能性があるが、右利きの人ならまず間違いなくそう構えている。私が鼓を習っているという話をすると構える恰好をする人が多いのだが、今まで 100% の人が左肩に担ぐ構えをした。「今でしょ」の林先生もそうだった。

残念ながら不正解である。
いろいろ考えてみたのだが、無意識に右手で打とうとしているのだろう。右手を自由にするために左に担げようとするのではないかというのが私の推測だ。
小鼓はそれでは打てない。左手で縦調べという裏皮と表皮を締める紐を握り、右肩に載せる。右手は肩から肘が動かないようにしつつ表皮を打つ。上記の CM の鼓の構えは一応合っている。そういう意味では誰かが正しく指導しているのかもしれないが、打ち方が駄目である。基本ができていないので一瞥して鳴らないとわかる打ち方である。
最近の雛飾りは簡略化されているので五人囃子まであるのはそうないかもしれないが、五人囃子は能の奏者(右から謡、能管、小鼓、大鼓、太鼓)であって、これもきちんとそうなるように飾り付けなければならない。ところが、NHK の古典芸能の番組で紹介された雛飾りの小鼓方は左肩に鼓を担げていた。情けない話である。

このように最近の日本人は鼓の構えを知らない。世界遺産だと言っては騒ぐ割にはユネスコ無形文化遺産に日本で初めて認定されている能のことは何も知らないのであった。

とは言うものの、私の知識も最近仕入れたものなので、あまり他人のことをとやかく言う資格はない。私の歌舞伎の知識は能以下である。
これを機会に自分も含めて少しは日本の伝統芸能に興味を持ってもらえばいいと思うのであった。