読書2009年01月25日 00時20分

今年は年初からあまりよくないことが続いているのでへこんでいる。まあ悪いところから始まればよくなるだろうというのもあるし、今年は当り年なので(当り年は気をつけないといけないらしい)注意しろという意味もあるのだろうと考えるようにすることにして少し気を取り直せたところである。

話は変って随分長い間本を読んでいない。読むとしても実用書などばかりで小説は数年に一度くらいしか読んでいないのではないかと思う。

少し前から青空文庫が気になっていた。正確には iPod touch で使える青空文庫用アプリケーションが気になっていて、無料のものを探していたがどうやらないらしい。暫く評判など気にしながら見ていたところ「i文庫」というのがいいらしいというのでインストールしてみた。

一番最初に読んだのは最近評判らしい「蟹工船」だった。この時代の小説にあまり馴染みがないからか、単に小林の使うことばが独特だからかわからないが、ところどころで引っかかるものの、長篇とまでは言えない分量なのでそれほど苦にもならずに数日で読了。表現がのんびりしているというか、もうすこし緊迫感があるとなおいいのにと思う箇所があるにはあったものの、搾取の時代を感じることができた。
今でも世界のどこかでは同様の過酷な労働や、搾取が行われているのだろうが、日本も以前はそういうことがあったわけだ。搾取については今でも日本で行われているという話もあるし、まあそうなのかもしれない。
それについても考えるところはあるが、それよりも昔そういうことが行われていたという実感がなかなかないし、メディアにしても綺麗ごとしか言わない傾向があるので、そういうことが闇に葬り去られているのだろうという印象を強くした。

続いて読んだのは太宰治の「人間失格」だ。恥ずかしい話だが太宰を読むのは初めてである。しかし自分としては今読んでちょうどよかったのではないかと思っている。というのも、若い時分に読んでいたらかなり影響されて自殺していたかもしれないような気がするからだ。この小説の主人公ほどではないが、何となく似ているところはある。残念ながら彼ほど端正な顔立ちではないが。
自殺で思い出したが、私には聴くと死にたくなる曲があった。

それから坂口安吾の「精神病覚え書」を読む。坂口も最初に読む作家である。太宰もいいが、坂口は私にとってなお面白い。

今は正岡容の「初代桂春団治研究」を読んでいる。これも短いのでまもなく読み終えるだろう。

その前に森鴎外の「最後の一句」を読んでいたのだった。これは正字正かなだった。やはり正字はいい。「姊」(所謂「姉」)の文字が出てくるところに不思議なコードというか暗号のようなものが出てきて最初は何のことやらわからなかったが、文脈から「姉」のことなのだろうとわかったのは繁体字中国語の知識が多少あったからだ。でなければ何かの注釈か底本の脚注かと思うところだった。まあ何でも齧ってみるものである。

職場では事務所で飲食はするなという煩いことを言われていて、必ず休憩室に行かなければならない。行っても本棚などがあるわけでもないので単にぼーっと珈琲などを飲んで戻ってくるだけなのだが、どうせなら何かないかということもあって青空文庫を気にしだしたと言ってもいい。因みに私は殆どゲームをしないので、そういう選択になるわけだ。おまけに無線 LAN が使えるわけでもないので休憩室で iPod touch を使ってウェブを見たりメールをすることもできないといのも青空文庫に走った理由でもある。
というようなわけで、最近は iPod touch が電子ブックと化している。

遅れ馳せながら本年もよろしくお願いします。